福岡伸一

『この本、「光の王国」が面白い!!』

私が勝手に「平成の寺田寅彦」と呼んでいる分子生物学者の福岡伸一氏が、秀逸なフェルメール論『フェルメール・光の王国』という本を刊行した。私も以前に紀行文の取材でパリのパサージュに関する執筆を頼まれた、ANAの機内誌「翼の王国」に長期連載していたものを一冊にまとめたものである。『デルフトの暗い部屋』というフェルメール論を、私は10年以上前に文芸誌の「新潮」で発表したが、それは、フェルメールの謎に光を当てるために、レーウェンフックスピノザを重要な存在として登場させたものである。福岡氏の視点もいささか重なったものがあるが、氏の独自な切り口には共振するものがある。本質にまったく言及していないフェルメール論は数多くあるが、久しぶりに、フェルメールの絵画が持つ不思議な引力の秘密に迫り、その正体を解かんとする労作である。ぜひ御一読をお薦めしたい。

 

さて、最近、12月から来年にかけて私の本の刊行予定が次々と入り、打ち合わせが続いて個展の時以上に多忙な日々となっている。一つは28日から始まる福井県立美術館での個展のカタログの校正チェック。それから、まもなく沖積舎から刊行される私の写真と詩を切り結んだ、今までにない形の写真集『サン・ラザールの着色された夜のために』の早急な制作進行。そして今月急に入って来た、拙著『モナリザ・ミステリー』の文庫化の話と、久世光彦氏との共著『死のある風景』を新装化した再版の話である。それとは別に詩人・野村喜和夫氏の詩と私の作品を絡めた詩画集(思潮社刊行)の為の打ち合わせと作品制作。1月の個展(森岡書店)のための新作・・・。このように続々とお話を頂くのはありがたく、私は各々に期待以上に応えたいと思っている。プロの骨頂とプライドにかけて。しかもこれとは別に、展覧会に絡めて福井新聞に私の半生記『美の回想』の連載(八回)を書き始めている。師走という程に年末は忙しい。『モナリザ・ミステリー』は新たに発見した事も書き加える為、執筆もある。風邪など引いている場合ではない。写真集は早々と購入予約も入り始めており、ありがたい!!!とにかく〈頑張りたい〉の日々を今、慌ただしく生きている。

 

 

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北川健次詩集『直線で描かれたブレヒトの犬』
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