筑摩書房

『「十蘭錬金術」刊行さる』

私のオブジェ作品を表紙の装画に使った久生十蘭の「十蘭錬金術」が河出文庫から刊行された。「十蘭万華鏡」「パノラマニア十蘭」「十蘭レトリカ」に続いて四冊目であり、全て私のオブジェを表紙に採用して異例の売行きであるという。特に今回の表紙は、本が届いた時に見て、デザイナーの山元伸子さんのレイアウトセンスが実に良く、間違いなく人気が出ると直感した。はたして、今回の本は刊行直後にして、既に文庫本全体の中から売行きの良い本のベスト5にランキングされており、一ヶ月に出る文庫本の新刊総数が200冊から300冊ある事を思えば、作品を提供した者として嬉しい限りである。唯、本の表紙を御覧になった方から、その作品を入手したいという問い合わせを今回も数件頂いたが、上記の四冊に採用されたオブジェは全て、コレクターや画廊のオーナーの個人コレクションに既に入っている為にお渡し出来ないのは残念である。版画と違って一点しか存在しないオリジナル作品のため、残念ではあるが、いたしかたのない事である。

 

今月から来月にかけて、上記の本以外に私の作品を表紙の装画にした本が続けて刊行される。筑摩書房、東京創元社、国書刊行会の三冊である。稀代の言葉の錬金術師 – 久生十蘭、そして難解な数学書(ガウス数論論文集)、ミステリーなど各々の異なった表現世界の表紙になる事で、私の作品世界が今一つの別な装いになる事は、作者としての秘かな興味がある。そして、書店というマスメディアを媒体として、その角度から私の作品の存在を知る人が更に増えてもらえれば、イメージを共有し合える関係がより確立し、広がっていくという意味において、お互いにとって良い事なのだと思う。ぶれない確とした美意識を持った「確かな眼」の持主は、まだまだ現実に存在している筈であると、私は確信している。

 

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『会場にて』

六本木の東京ミッドタウンで開催中の「Tokyo Photo 2011」に行く。アイデア先行の写真、現代美術として見せる為の見せかけのようなディスプレーが目立ち、作品それ自体が強いイメージを持った写真がほとんどない。「私もそろそろ写真だけの作品を組んだ写真集を出したいものだ・・・」と思いながら、自分の個展会場へと向かった。

 

会場に居ると、筑摩書房の編集長の大山さんが来られた。企画出版の話を頂きながら、制作に追われて未だ着手していない書き下ろし原稿の執筆を促される。この本は刊行すれば、間違いなく話題作となる切り口のものである。「東日本大震災の時の津波のすさまじい描写から始めます。」と大山さんに話す。構想は既に出来ている。年内にダ・ヴィンチを書き終え,その後、ゴッホコーネルムンクマン・レイ・・・・といっきに書こうと思う。

 

 

 

 

大山さんに続いて、沖積舎の沖山さんが来られた。沖山さんは、私の最初の版画集をプロデュースして刊行された方である。会場を一巡した後、写真「ヴェネツィア – 千年劇場」を購入された。そして、私に「すぐに写真集を出しませんか!?」と切り出され、私を驚かせた。既に沖山さんの頭の中では本の構想が出来ているらしい。再び言うが、私は驚いた!!。何故なら、その日の午前中に「自分の写真集」の事がふと浮かんだからである。予知は私の場合度々あるが、今日また、それが出たか!!。勿論、沖山さんに快諾の意を告げる。

 

 

 

 

沖山さんに続いて写真家の川田喜久治さん来廊。私のポートレートを会場で撮られる。かつて川田さんは、三島由紀夫の終末の姿を予知するかのような、三島の異形なポートレートを撮られた凄腕の人。撮影されながら、自分の魂が間違いなく吸われていくのを実感する。拙宅に川田さんから写真が届くのが楽しみである。個展は10月10日(月・祝)まで続く。まだまだ、これからである。

 

 

「球体玩具考」

 

 

 

 

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北川健次詩集『直線で描かれたブレヒトの犬』
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