越後湯沢

久しぶりに横浜を離れ、越後湯沢を経て、秋の深まりを見せる日本海側に出て富山の地を訪れた。今回で七回目となる私の個展が開催されているぎゃらりー図南に行くのである。今回の個展は『Muybridgeの緑の線上に沿って』。連続写真を撮影したマイブリッジへのオマージュを込めた連作を中心とした三十点近い新作の展示である。

 

ぎゃらりー図南は開廊して20年になる。オーナーの川端秀明氏は開廊当初から私の作品に興味を持たれ個展を開催したいという希望を抱いておられたが、東京の方の画廊と契約をしている作家だと思われていた由。しかし、八年前に友人の版画家A氏を通して打診があった際、私はハッキリと、自由な立場であり、唯、信念のある画廊、そして美意識の高い人物とのみお付き合いをしている旨をお話しした。版画家のA氏は私の信頼している人である。A氏のご紹介ならば確かな人であろうという直感を抱いていた。実際にオーナーの川端秀明氏に御会いしてみると、私はたちまち旧知のように打ち解けた。そればかりか価値観までも共通し、私はもっと早くに川端氏と出会っていなかった事を悔やんだ。そればかりではなく、第一回目の個展から数多くの作品が、この画廊のコレクターの方々にコレクションされて大成功をおさめたのである。回を重ねる度に私はコレクターの方々とも御会いする機会があったが、その方々のコレクションされている私の作品は数多く、昨年の秋に福井県立美術館で開催された個展の際には、〈個人蔵〉としての相当数の作品をお借りする事になり、私も美術館もずいぶんと助けられたのであった。作家の多くは発表の場を東京中心にのみ考えていて、結果として窮しているが、私の持論は、日本全国に何処に眼識の高い人がいるかわからない。そして、事実かなりの数で存在しているという事を、私は体験している。そしてそこには、実に素晴らしい出会いの数々が待ち受けているのである。

 

 

 

日時: 作成者: kitagawa | コメントは受け付けていません。

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北川健次詩集『直線で描かれたブレヒトの犬』
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