自動人形の夜のために

『晩秋に一人想う事』

11月8日、3週間開催されていた日本橋高島屋.美術画廊Xでの個展が盛況のうちに終了した。会期が始まる直前からコロナの感染者が不思議な激減を見せ始め、その幸運な時期の中で個展は無事に開催され、たくさんの人が遠方からも含めて会場に来られた。ご来場頂きましたすべての皆様に、心より御礼を申し上げます。

 

 

 

 

……さて、会期中に感じた事であるが、私の作品はよほど強度な引力を持っているのであろうか、人々をして普通に30分以上は会場にとどまり、わけても作品のコレクションを考えている人は1、2時間はじっくりと作品と対峙して、これ!!と断じた作品を一点、もしくは複数を新たなコレクションに決めていく。今回の個展では作品を購入された方の約7割が女性であった。……以前に版画だけを発表していた頃はコレクタ―はほとんどが男性であったが、写真、コラ―ジュ、……そしてオブジェになってからは次第に男女半々になり、今回は遂に女性の方の数が上回った。その決め方も実に真剣勝負で深い鋭さがあり、見ている私には実に手応えを覚える光景である。……また来廊される方は、10代からかなりの年輩の方まで幅広く、世代を越えて各々の感性で、想像力の発火装置である私の作品から自由なイメ―ジを立ち上げているのである。私の持論である「作者は二人いる。私は作品をこの世に立ち上げる作者であるが、作品を観て、そこから自在なイメ―ジを立ち上げ、永い対話を交わしていく人がもう一人の作者なのである」という考えは、会期中、毎日自分の個展に立ち会う度に深まっていく確信である。

 

……来廊する人は、午後から夕方にかけてが多いので、午前中の早い時は静かな時があり、完成した新作70点以上が並ぶ会場で、作品と自分の〈現在のありよう〉を静かに分析している事が多く、これが実に貴重な時間になっている。次作への展開、新たな領域への挑戦をどうするか、……など様々な事が見えて来て実に生産的な時間なのである。……そして、この個展の後に待っている、第二詩集(『自動人形の夜に』)刊行の為の、詩の原稿執筆も画廊の中で始めている。ちなみに第二詩集は、①fragment(断片)②自動人形の夜に③Romanesqe の三部作を構想中である。

 

日本橋高島屋.美術画廊Xでの個展は、毎年連続で開催され、今回が13回目になる。……そして来年秋の第14回目の個展開催も決まり、次の個展のタイトルも会期中に早々と決まっている。……制作に於いて現在の全てを出し切る事で、新たな次の姿が眼前に立ち現れて来る。私には、まだまだ表現したいものが無尽蔵にあるのである。………………さて次回のブログは、一転して「贋作よもやま噺」について書く予定。昨今の話題から、ハンスベルメ―ル、キリコの驚愕的な逸話まで満載。……乞う、ご期待。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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