昨年夏のブログで、来年の夏は更に酷暑(火炎地獄)になる!と断言的に書いたが、果たして6月末で既にこの暑さ。…梅雨は忽ち消え去り、大地は乾き、グロテスクに歪んだ酷暑の夏の顔が、出番を待ちきれないという風に、もう舞台の袖から早々と顔を出している。
……(熱中症予防の為に水分を小まめに、せめて1㍑は呑んだ方がいい)…とアドバイス的に云われているが、実はそこに落とし穴がある。……先日、福井の養鶏場で沢山の鶏が猛暑の為に水ばかり呑んだ結果、産まれ出た玉子の殻はブヨブヨに軟らかく、中身もドロドロだったというニュ-スは記憶に新しい。人間も同じである。…水ばかりの過剰摂取は次第に血液を薄くして体調を逆に狂わせてしまうのである。……夏は麦茶が良いという先祖からの伝承の知恵はやはり正しく、麦茶はミネラル、特にカリウム、マグネシウム、カルシウム、リン等が豊富に含まれていて、体内のバランスを整え、血液をサラサラにする効果もあって、ここは強くお薦めである。
さて、次は大事な個展のお話しを。…今から25年以上前の事。ある時、平凡社の月刊誌『太陽』の編集長の清水壽明さんが(高輪台の画廊で、なかなか才能のある女性が個展を開催しているので観にいった方がいいですよ。)と強く薦めるので観に行った事があった。…確かに、繊細さと刺すような感性の鋭さを持った作品が数多く展示されていて、作者のその若い女性に才能を感じた事を覚えている。…話も打てば響く手応えがあり、私は暫くの間、その作家との会話を楽しんだ。……間違いなく才能がある次世代の作家に彼女はなるな!…そう確信するものがあった。…それが佐々木聖さんとの出逢いであった。
…数年経ったある日、再び私の前に現れた佐々木さんは、しかし一変して作家になるのをやめて、ギャラリ-を開くというので、驚いてしまった。そして何故に画廊のオ-ナ-にという私の疑問をよそに、佐々木聖さんは、シュルレアリスムを中心に置いた実に独創的なギャラリ-を立ち上げ、忽ち独自な顔を持った、センスの良さが光る展示空間を作り上げたのであった。
その画廊の名前を『LIBRAIRIE6』という。…librairie(リブラリエ)はフランス語で書店の意味。6はSixで発音はシス。繋げるとリブラリエ・シスで第6書店となるが、この画廊名、パリ的なセンスの冴えがある。…取り上げる作家も野中ユリさん、金子國義さん、四谷シモンさん、合田佐和子さん…など、私も知己がある曲者の強烈な作家ばかりで、何年目かに私も個展を開催した事があった。…黒曜石の光のような稀な光輝を帯びた佐々木さんの個性に惹かれるように、来廊する方は年々増えていき、知名度も増して、画廊にいつ行っても、決まって来廊して熱心に作品を観る人が絶えた事が無いのは、やはり彼女の人柄であり魅力なのであろう。
…LIBRAIRIE6での個展は13年ぶりくらいである。…お互い独自な路線を走っていたのが、2025年のここに至って、佐々木さんと私の方向性に何らかの一致するものが見えて来たようにも思われるのである。
先日、東京が土砂降りであった日に、画廊に私も行って展示作業をおこなった。…私は作品展示の高さを決めるのが仕事で、作品配置その他は佐々木さんが決めていく。…その作業ぶりを見ていた私は、佐々木さんのセンスの良さに驚いた。…かつて覚えたあの作品センスの冴えは、ここに見事に活きている。…そう思ったのであった。
……私が在廊する日時は、7月の5日・12日・19日の各土曜日と、13日(日)の2時から6時の閉廊時間まで。…横浜のアトリエから恵比寿の画廊までは電車で近いので、他の日も急に思い立ったら行く事になるであろう。……今回はかなり大きなロンドン製の古い壁掛け時計を真っ二つに切断したオブジェほか、30数点を展示している。…ぜひのご来廊、ご高覧をお願いする次第である。
北川健次「七つに分割されたマルグリットの肖像」展
会期:2025年7月5日(土)〜7月20日(日) 12:00-18:00
住所:東京都渋谷区恵比寿南1-12-2 南ビル3F
電話:03-6452-3345
月曜日・火曜日は休廊)*展覧会最終日は17:00閉廊
作家在廊日:7月5日(土) 、12日(土)、13日(日)、19日(土) 14:00~