『巴里、そしてブリュッセルの旅から』 

11日間にわたるイメ―ジの充電と撮影、そして作品の材料の収集という目的の多い旅を終えて、昨日無事に帰国した。しかし、テロを警戒してか日本人の旅行者は全くおらず、パリの画廊で作品展を開催中の平さん以外は全く日本人を見かけなかったのは、やはり一種の戦争に準ずる臨戦状態にフランスがある事をリアルに映していて、以前のパリ、そしてブリュッセルとは違う空気を感じた。ブリュッセルからパリ北駅に着いたその日に、ISに忠誠を誓ったという女性を中心とする連中によるノートルダム寺院爆破計画がまさに実行直前で発覚するなど、不穏な中での11日間であった。

 

……しかし、不穏な気配を別にして、旅は私に多くのものをもたらしてくれた。最初の地ブリュッセルは実に25年ぶりの再訪である。当時の私は版画からオブジェに表現の軸を移す端境期にあり、かなり力んだ気負った旅であった。……ブリュッセルは坂の多い街であるが、私はその坂の至る所で、当時の自分の影と交差する感慨を覚えた。宿はビクトル・ユゴ―が「世界で最も美しい劇場」と形容した、ギルド達の建てたグランプラス広場に近く、宿の窓からその高い尖搭が見えた。マグリットの暮らした家が郊外に現存しており興味をひいたが、これは止めた。ベルギ―におけるISの潜伏地と重なるからである。次に移ったパリの宿は、パッサ―ジュ(天窓がガラスで覆われた直線の通路)の上にあり、私の日々の疲れを癒してくれた。しかしこの宿は最後の日にハプニングが起きた。早朝に物凄い警告音が鳴り響き、宿泊者の多くが外に避難し、2台の消防車が駆けつけてきた。私は食堂で様子を見ていると何人もの消防士がホテル内を慌ただしく点検している。幸いボヤ騒ぎで終わったが、時節柄、かなり緊張したものがあった。

 

ビカソ美術館の近くにある17世紀の遺構―パリ歴史図書館は、かつて私の版画(ランボ―を主題とした版画二点)が、クレ―、ジャコメッティ、ビカソ、ジムダイン達の版画と共に展示された『RIMBAUDMANIA展』が開催された建物であるが、これは私の自信を深める重要な展覧会であった。……パリ歴史図書館を訪れた次に、爆破未遂で終わったノ―トルダム寺院の近く、サンルイ島を渡り、古書店で知られるシェイクスピア・アンド・カンパニ―、フ―コ―の振り子の実験(地球の自転を証明する)で知られるパンテオンetc、数多くの場所を巡って写真の撮影に徹底した。……そして、最終日に訪れたル―ヴル美術館で私は、信じ難い現実と直面する事になる。……ダヴィンチが『モナ・リザ』の次に描いた『聖アンナと聖母子』が、修復士たちのやり過ぎた加筆によって、全くの凡作に変えられてしまったという、怒りが震える程の大失態をやってしまった現実に直面するのである。……この件に関する詳しい内容は次回のメッセージで!!

 

 

 

 

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