月別アーカイブ: 10月 2014

『パリからの一通の手紙』

個展会場から夜半にアトリエに戻ると,パリのパサージュ『ヴェロ・ドダ』古書店の店主であるベルナール・ゴーギャン氏から手紙が届いていた。ゴーギャン氏は文字に個性があり過ぎて判読が難しい。苦労しながらなんとか訳すと,嬉しい事が書いてあった。「今回の個展の図録を有難う。相変わらず感性の鋭い作品で私は大好きである。君のオブジェとコラージュを、パリで展示すれば全部売り切る自信が私にはある。一度こちらでの展覧会を本気で考えてみてほしい。」という内容であった。

 

ゴーギャン氏は、サルトルやバタイユとも知己があり、ホックニーやウォーホルとも親しく、更に氏自身がハンス・ベルメールの大コレクターとして知られるだけに人脈は広い。パリの文化人として最古参で知られるゴーギャン氏を通して、作品は広く行き渡っていくに相違ない。以前も銀座の画廊で個展をした際に、ルーヴル美術館の近くの画商が来られ、「パレ・ロワイヤル」をモチーフとしたオブジェを気に入り、その場で購入して持ち帰り、今もパリの画廊に大切に掛けてある。しかし、私は寡作であり、作った作品は全て国内でコレクターの方々に行き渡ってしまう為に、海外に広げるには作品数が少な過ぎる。以前にベルギーに近い地にあるランボーミュージアムや、パリ市立歴史図書館で展示された私の作品を見るだけで、今の私は充ち足りているのである。

 

さて、日本橋高島屋美術画廊Xでの個展は連日多くの方が見えられて盛況である。昨日は佐賀から、そして札幌から、遠方にも関わらずコレクターの方が来られて久しぶりの嬉しい再会となった。わざわざ個展の為に来られたというから本当に感謝しなければならない。このようにいつ、何処から親しい人が来られるかわからないので、私は朝10時過ぎから閉店の20時まで、毎日会場に在廊している。孤独な制作時と比べて、一変した忙しい三週間の会期がまだ暫く、11月10日まで続くのである。

 

 

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『最大規模の個展が始まった』

22日から日本橋高島屋本店6Fにある美術画廊Xで、今回で連続六回目となる私の個展『Stresaの組鐘 ― 偏角31度の見えない螺旋に沿って』が始まった。開催前日の展示の時は激しい雨であったが、その中をぬって早くもコレクターの方が来られ作品の購入予約をされていった。実際にコレクションしていくという行為もまた創造行為であり、それが作品への直な批評でもあるというのは、作り手の私の実感から来る考えであるが、その意味でも本当に有り難いことだと思う。

 

個展初日も激しい雨であったが、それでも多くの方々が来場され、初日だけで十点以上の作品がコレクションされていく事となった。今回の出品総数は89点。個展としては今までにない規模の点数である。今回の個展の原点となった、五月のイタリアを巡る旅は、私のイマジネーションを激しく揺さぶってくれた収穫の多い旅であった。今回はオブジェだけでも20点以上の出品作品を作り出し、その制作は展示日の前夜遅くまで続いたのであった。会期は11月10日迄で、個展は始まったばかり。私は毎日会場に在廊の予定であるが、また新しい、面白い出会いが待っているように思われる。今回の個展はぜひご覧頂きたい見応えのある内容になっている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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『講演会のお知らせ』

3・11の大津波以来、私は〈地獄〉とは、遠い死後の世界や観念ではなく、実は、この世にありありと存在するものであり、彼の世と此の世が地続きである事を、この度の御嶽山の爆発の凄まじい映像を見て久しぶりに痛感した。惨事というものは、いつでも想定外に訪れるものであるが、つまりはこの〈想定外〉という言葉は、自然界の驚異に対する人間の想像力の限界と、脳というものの本質が楽観的である事を映して余りあるものがある。

 

今年になって増え始めた長雨や台風の今までにない規模は、ひとえに近海の水温が俄に1度高くなっている事に依るらしいが、考えてみると、農業と漁業に、その生態系の狂いが早晩にも直撃してくるように思われる。過去の経験が全く役立たない〈不測〉の時代が、もう既に私たちの目の前に大きく立ちはだかっている。

 

…… さて話は一転して今日はお知らせを。古い知巳でもあるコレクターの鈴木忠男さんから、今月の12日(日)に講演をやって頂きたいという依頼があり、制作の合間をぬって喋る次第とあいなった。鈴木さんは「美楽舎」という45名ほどの会員から成る美術コレクターの会に25年近く会員として関わって来られた由。電話で依頼があったその時点で、私は「コレクションとは何か!?」というテーマを提案した。私自身も又、ルドンゴヤホックニーデュシャンヴォルスベルメール …… といった海外の作品や、駒井哲郎池田満寿夫加納光於 …… そして中西夏之などの日本人作家の作品を多くコレクションしているが、「コレクションするという行為は創造行為である」という私の信念を軸に、私が関わって来た画商の方々の生き様や、画商としての理念、又、私が出会った〈本物〉といえるべき先達の作家たちについて、時間の許す限り話題豊富に喋べろうと思っている。ご興味のある方は、会員でなくても自由参加が可能なので、下記の要領にて御参加下さい。

 

講演タイトル:『コレクションとは何か!?』

日時:10月12日(日)15時~16時半(質疑応答含む)

トーク終了後に懇親会があります。

場所:K’s ギャラリー(美楽舎事務局)

東京都中央区京橋3-9-2 プラザ京橋ビル3F

電話:03-5159-0809

Fax: 03-5579-9004

参加費は2,000円(懇親会ドリンク付)

 

参加ご希望の方は、

当日前までにギャラリーの方に電話にて直接お申し込み下さい。

 

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北川健次詩集『直線で描かれたブレヒトの犬』
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