月別アーカイブ: 9月 2010

『現在進行中の話』

京都から戻った翌日、テレビ番組制作会社のK氏と田園調布のカフェでお会いして、打ち合わせを行った。5年前に新潮社から刊行した私の著書『「モナ・リザ」ミステリー』の映像化を企画されているのである。K氏は本の中の、ダ・ヴィンチフェルメール、そしてスペインの寒村カダケスを舞台にして登場するダリピカソデュシャンの三作の何れも高く評価され、又、現在連載中の「蕪村と西洋美術の交感」にも強い興味を示されている。今までにも美術番組担当者や、「美の巨人たち」に関わった人とも話をしたが、K氏が最も私の表現した核を理解してくれており、話をしていて共振するものがある。美を巡る不思議な旅が映像化すれば、文章とは異なる世界が拡がるであろう。

 

さて、新しくサイトを立ち上げてから多くの方からメールが入り、「作品を入手したいのだが、どうすればコレクション出来るのか」という問い合わせが以前よりもかなり来るようになった。東京、京都、名古屋、富山、香川などに近い方は、個展の際にギャラリーまで行き、コレクション出来るが、メールの多くは例えば北海道や九州,或は青森や山口・・・といった,全く個展の機会がない所からかなりの数が来ているのである。日本は狭いようで広い。そして、今までコレクションの機会がなかった方が、私のサイトを見て真剣に作品に興味を持たれているのである。オブジェやコラージュなどは一点しか存在せず、マチエールを実際に見て欲しいし、またそうでなくては伝わらないデリケートなものがある。問い合わせは旧作の版画や新作の写真までも含めて幅広い。今はこの後に企画されている個展のために新作を作らねばならない。しかし、頂いた多くの方々のメールにも、何らかの返答をしなければならないであろう。熱心な方々からのメールは有り難い。何らかの良い方法はないものだろうか・・・・。

 

 

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『日記抄』

23日正午に福井駅に着く。出迎えてくれた福井TVの山内氏らと共に昼食、打ち合わせの後、車で豊かな自然が残る勝山へ行く。番組の撮影地である中上邸(磯崎新による設計)に入って驚いた。瑛九の晩年の大作2点他、オノサトトシノブ等の作品がズラリと掛かっている。ゆうに5千万以上はするであろう。すぐに収録開始。「瑛九の晩年の主題は光との合一。しかしそれは印象派の光の分析や頌(オード)とは異なり、末期の眼が捉えた心象と見ていいのではないだろうか・・・」などと、約40分程インタビューに答える。放送は正月頃らしい。収録後、小コレクターの会の精神を引き継いで活動しておられる荒井氏の御厚意で鮎料理や寿司を頂く。極めて美味なり。荒井氏からデモクラート運動についての貴重な話などを伺う。

 

24日9時に福井県立美術館へ。来秋の個展のための会場の下見である。11時に福井を発ち,京都で個展開催中のギャルリー宮脇に着く。早くも数点の作品に購入の予約あり。京都精華大の生駒氏、京都造形大の藤井氏ら来廊。夜にイタリア料理を頂いた後、宿舎のパレスサイドホテルへ。外人多し。幽霊は遂に出ず、残念。

 

25日早朝、ホテル前の蛤御門に行き、門に今も残る禁門の変時の乱戦の証しである弾痕に触れながら勇猛の士・久坂玄端に思いを馳せる。9時にホテルに立命館大の平尾氏来る。平尾氏とは20年前の留学時にバルセロナの宿で知り合って以来、長いお付き合いの友である。タクシーで平尾氏と共に一乗寺詩仙堂そばの金福寺に行き、与謝蕪村の墓と芭蕉庵を見る。墓から一望する京の街の眺めはすばらしい。この寺には、井伊直弼の愛人で、安政の大獄で多くの志士を死に追いやる活動をした村山たか女の遺品も多くあり、私を驚かせた。

 

平尾氏と画廊に行くと、また新たな購入予約が入っていた。先日、はるばる大阪から東京の私の個展を見に来られ、再び京都の個展にも来られたというMさんが購入されたのである。Mさんは未だ20歳を過ぎたばかりの若い女性。幅広い世代に渡って私の作品は支持されている。これは表現者にとって実に重要な意味を持つ。コレクション頂いた全ての皆さんに感謝を捧げたい。夜半に横浜に帰る。
北川健次新作展〈目隠しされたロレンツォ・ロットが語る12の作り話〉

ギャルリー宮脇
9月23日(水)〜10月17日(日)1PM〜7PM (月曜休廊)
京都市中京区寺町通二条上ル東側 /tel.075-231-2321

 

 

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『福井、そして秋の京都へ』

東京の高島屋での個展がようやく終わった。嬉しい事に、昨年の個展以上の数の作品がコレクションされ、多くの人が訪れた。全国の主な美術館の学芸委員諸子も来られて、今後の活動につながる発展的な話も頂いた。いろんな意味で手応えのある個展であったと云えよう。

 

さて、23日には私の出身地の福井に行き、1950年代を盛りにこの地にあった「創造美術運動」と「版画コレクターの会」についてテレビでの対談を行うことになっている。版画の隆盛前の瑛九池田満寿夫アイオー達の極貧生活を支えた活動についてしゃべるのである。テレビ収録の後は、鮎料理が用意されている由。17歳の時、夜汽車で、まるで思いつめたように上京した私ではあったが、やはり故郷はありがたい。水がおいしい土地だけに楽しみである。翌24日の午前中に福井県立美術館に行き、来秋に予定されている個展会場の下見。そして昼から京都に向かい、ギャルリー宮脇で23日から開催している私の個展を見て一泊し、25日の夜に横浜に帰る予定。画廊が用意してくれた宿は幽霊が出るスポットとして有名な所らしく、今から楽しみである。京都では、蕪村の墓のある金福寺に参拝し、「人形」にまつわる怖い話を京都造形大のF先生からイイダコーヒー店で伺い、かつて体験した思い出すも不気味な先斗町や宮川町、祇園、東山周辺を久しぶりに巡る予定。京都はこれからが紅葉が美しい季節、雅の地での充電をたっぷりとして来ようと思う。

 

北川健次新作展〈目隠しされたロレンツォ・ロットが語る12の作り話〉

ギャルリー宮脇
9月23日(水)〜10月17日(日)1PM〜7PM (月曜休廊)
京都市中京区寺町通二条上ル東側 /tel.075-231-2321

 

 

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『個展も後半に・・・』

先日、個展会場に来られた美術評論家のA氏は与謝蕪村の大ファンだとか。蕪村と美術を絡めた本を一冊書く事を老後の楽しみにしていたらしいが、しかし、私が既に連載でやってしまっているのを知り失意の様子を浮かべていた。老後の楽しみかぁ。拠り所など何も無い崖っぷちで才能一本で勝負している私には無縁な言葉である。更に云えば、濡れたようなリリシズム・人工美・魔界・怪しいエロティシズム・・・など多彩な引き出しを持つ蕪村と対峙するには、書き手もまた感性が旬でなくてはいけない。老後の楽しみで書くには、蕪村は難物すぎるであろう。

 

個展(20日まで開催中)も後半に入った。予想を越えたペースで作品がコレクターの方々に購入されていき、既に昨年の個展を上回った。来秋の高島屋での個展も早々と決まったが、来年のその頃は、福井県立美術館でも私の大きな個展が予定されており、また忙しくなるであろう。更なる試みの展開、更なる実験をやらなくては・・・。オブジェ・コラージュ・版画・写真。それぞれ等しくコレクションされていっている事は、私の信念と自信を深めてくれる。各々に秘めたイメージの核が確かに伝わっているのを、会場にいて実感出来るからである。16日は午前中に新潮社による作品撮影、20日は午前中にTV番組のための作品撮影であるが、それを外して、ぜひ未だご覧になっておられない方には見て頂きたい内容である。画廊から帰ると、休む間もなく作品の制作を行っている。次なる個展に向けて新たな表現を試みる日々なのである。

 

 

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『水銀質の危うい戯れ』

今回の個展では、水銀を使ったオブジェも出品している。液体でも固体でもない謎めいた銀の流動体をバロックに見立て、そこに擬人化したイメージを重ねて、『バロックの真珠ーあるいはレカミエ婦人の彷徨える二つの感情』と題した作品であるが、そこに潜む危ういエロティシズムを直感し、興味を覚える人が多い。

 

 

 

 

又、イブ・クラインが実際に着色したオリジナルの断片をオブジェの中にそっと忍ばせ、『パルミジャーノの青い肖像』と題した作品もある。今までの作品とは異なった展開をしている今回の個展、暑さにもかかわらず多くの方々が来場され、中でも、オブジェを2点、大作の版画を1点まとめて購入された方の出現は、私を驚かせた。今まで200点以上のオブジェ、9000枚以上もの版画を世に送って来たが、それらは全てコレクションされて,アトリエには何も残っていない。これは表現者である私の誇りとするものであるが、今回の出品作品も全て、縁ある方々の元へとコレクションされていくのであろう。今、画廊でその作品群を見ているが、それは作者としての作品との惜別の時間でもあるのである。

 

 

 

 

 

 

 

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『個展、いよいよ ー 始まる。』

 

東京『日本橋高島屋本店6F・美術画廊X』で、1日から個展「目隠しされたロレンツォ・ロットが語る12の作り話」が始まった。搬入前日まで大作のオブジェの制作をしていたため、過労はピーク。しかし、会場で作品が次々と展示されていくと、再び元気が出てくる。オブジェ・コラージュ・版画・写真とジャンルが分かれているが全体が美しい調和を成していく。

 

 

会期は9月20日までだが、デパート内なので休みがなくAM10:00からPM20:00までオープン。ぜひご覧いただきたいし、またご期待に応えられる作品内容だという自信がある。コレクターの方が皆さん熱心に質問してくれるので、こちらも熱く答えてしまう。共通の作品をめぐって、言葉による感性のぶつかり合いは、今一つの興味深いものがある。作品をコレクションされる人達は、どなたも皆、只者ではない。個展は制作とは違う熱い緊張に満ちている。ぜひご覧ください。

 

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北川健次詩集『直線で描かれたブレヒトの犬』
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