『みんな水の中……』

最近のTVの画面を見ていると、ほとんど毎日といった感じで水浸しで冠水になった街の光景が全国の至るところで当たり前のように見受けられるが、この光景はやはり日常がかなり異常化してきている事の証であるだろう。今までは夏と冬に顕著だった気象の異常が、いよいよ四季を問わずに見えてきた観がある。台風、天を切り裂いて地上に炸裂する雷、亜熱帯化したような突然のスコール……etc。リオのオリンピック会場内は屋根が無いので、閉会式では、この地には珍しい雨が降りそそぎ、選手たちや関係者をひたひたと濡らしていたが、四年後の東京は正に台風や雷の最盛期。年々悪化する猛暑とうだるような湿気の中で、選手たちは酷暑と荒れ狂う雷雨と戦いながら死線をさ迷うような戦いを強いられる事は間違いないであろう。一昨年よりも去年、そしてそれよりも今年と、気象はその狂った異形でグロテスクな顔を加速的に露にして来ている。

 

戦後最大級という台風がまもなく上陸するという。その台風が過ぎ去る頃の9月1日に撮影のためにパリ、そしてベルギ―に私は向かい、12日に帰国する予定で、今は頭を切り替えている。ベルギ―のブリュッセルの街は実に25年ぶりの懐かしい再訪である。以前に泊まった時は宿のホテルが「小便小僧」の真ん前であったが、今も小僧は律儀に放水しているのであろうか?……ちなみにこの街中には対のように「小便娘」の像がひっそりと、あまり目立たなく在るのであるが、ガイドブックに載っていないその事を知る人はほとんどいない。リ―ルの骨董市は無差別テロの危険性大のために中止となったが、その流れがブリュッセルに来る為に危険性のリスクは何ら変わってはいない。……とはいえ、マグリットやデルヴォ―、そしてクノップフを愛する私としてはそこは期待の多い街である。……旅の体験は変容して、私の作品に虚構の華を投影する事は必至である。……私はまた生まれ変わっていくのである。

 

……さて、9月28日から開催される日本橋高島屋での個展の為の全作品がほぼ制作を完了し、案内状の校正も最終段階に来た。今回は新作のオブジェだけでも約60点近い数。今までの中でも最も多いオブジェ作品の出品となる。そこに新作のペィンティングと写真、そしてコラ―ジュなどが加わるので、かなりの出品数となるが、とりあえず今は集中して制作に没頭していた事からの解放感に包まれている。そして、作り終えた作品全てに作者としての強い手応えを覚えているというのが偽らざる実感である。

 

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北川健次詩集『直線で描かれたブレヒトの犬』
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