月別アーカイブ: 3月 2011

『日本中が揺れている』

「天災は忘れた頃にやってくる」の警句を記したのは、物理学者の寺田寅彦であるが、この度の地震はまさしくそのように、虚を衝くようにして発生した。私の住む横浜は震度5弱。折れるように歪んで揺れる眼前の光景を見て、一瞬ではあるが「今日、死ぬのか!?」という感覚に襲われた。しかし、同じ時に東北地方では、二万人を超す人々が一瞬で、どす黒い津波にのみこまれ尊い命を奪われていったのであった。

 

昨日発表された統計によると、津波の警報を聞いて実際に素早く逃げた人々は、何と全体の一割にも達していなかったという。信じ難いが、ほとんどの人々が様子見であったのである。「津波警報が発令されましたぁ〜」ーまるで秋の運動会の予行演習のように、ゆったりと流れる口調をTVで聞いていると、もしこの時に、緊張感を持った厳しい口調で人々に危機を促していたら・・・・と、つくづく思ってしまう。瞬間に生と死が運命的に分かれるのは、この警報の現実感を欠いた在り様も大きく関わっていたのではあるまいか。要は、一刻を争うのである。

 

地震とは、プレート(地球の表面を覆う薄い殻)自体は変形しないために、プレート運動による地球内部の歪みが境界の部分に集中し、その歪みを解消しようとして発生したエネルギーである。それを思えば、今回も度々使われた〈想定外〉という言葉が全くピントはずれであるのは誰にもわかる事である。ちなみに、私の故郷である福井の原発が想定している津波の高さは僅かに1.6mであるという。何という想像力の欠如か!!!

 

 

「人類は大洪水によって間違いなく滅びる」ーはるか500年前に、そう予言したのはレオナルド・ダ・ヴィンチであった。彼が描いた大洪水の不気味なデッサンは、ここ数日にテレビで流れた津波の化け物と化した凄まじい場面と重なって、いっそうリアルである。その彼が最後に描いたのが『洗礼者ヨハネ』であった。背景の闇は人類の絶えたイメージ、毛髪のうねりは水の濁流を暗示していると云われているが、事実、私もそう思う。いわき市に住む友人は机の下に逃れて助かったが、多賀城市に住む友人の安否は未だ不明である。余震の動きは、その震源地を少しづつ関東の方へと下げて、不気味に移動している。眼前に迫った死の恐怖は、未だ消え去ってはいない。誰も皆、共に幸運であれかしと、切に今は祈るのみである。

 

 

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『フェルメールについての講演のお知らせ』

3月7日、今日は一転して雪である。二つの個展がようやく終わり、今は一息ついている気分である。それにしても個展には多くの方々が来られた。その数合わせて約千人。これは画廊という形では驚異的な数字である。皆さんが時間をかけて鑑賞し、幅広い世代の方々に作品がコレクションされていった。この場を借りてあらためてお礼を申し上げたい。

 

さて、今日は今月の26日(土)にフェルメールについての講演を開催するので、そのお知らせである。講師は私の他に画家の野見山暁治氏(27日)、修復家の岩井希久子氏(4月2日)の三名。私が長く講師をしている東急セミナーBEが「自由が丘校」を開設するに伴い、それを記念して行う連続講演なのである。

 

私の講演は、渋谷Bunkamuraザ・ミュージアム日本初展示されるフェルメールの『地理学者』に絡んだもので、演題は『光の結晶—フェルメール絵画の謎・その本質を読み解く』。なぜ古今の美術史において彼の作品のみが突出して異質なまでに美しく見えるのかという、フェルメール絵画の本質的な疑問と謎に真正面から迫り、実証的に、彼が使ったとされるカメラ・オブスキュラの原器を、受講された方々に見せながら解き明かしていくというものである。又、今回初展示される『地理学者』のモデルと、フェルメールとの数奇な関係につぃて言及し、スピノザまでも登場する内容になっている。私が以前に文芸誌「新潮」に発表したフェルメール論『デルフトの暗い部屋』を軸に、新たな解釈を加えていく。フェルメールに興味のある方は、ぜひ御参加ください。受講をご希望される方は、東急セミナーBEまで。

 

 

 

『光の結晶—フェルメール絵画の謎・その本質を読み解く』

日時:3月26日(土)13:30〜15:00

会費:2.000円(定員制)
会場:東急セミナーBE「自由が丘校」
東京都目黒区自由が丘1-6-9 自由が丘東急4F

東急東横線・大井町線「自由が丘」駅 徒歩1分

 

 

〈お申し込み〉
東急セミナーBE 自由が丘校・開業準備室

TEL.03-3477-6277(3/22(火)まで)

TEL. 03-5726-4153 (3/23(水)より)
担当.加藤正子
*定員に達し次第閉め切ります。

 

 

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