#佐谷和彦

『…健康のためなら死んでもいい!』

 

…2025年7月……酷暑である。

 

…命の危険を考えて男性も日傘をさすまでに今や時代はなっている。炎天下、日陰を探して人々は難しい顔をして歩いているが、ここに掲載した昭和初期頃の日傘をさして街を歩く女性たちの夏の風情はもはや絶えてしまった

 

 

 

 

…そして沖の何かに向かってやわらかく手を振る女性たちの余裕あるこの笑顔は、今日の女性たちからは消えてしまった、もはや文化遺産のようである。

 

 

 

さて話は、最近凄まじい頻度で地震が多発している悪石島に移る。…悪石島(あくせきじま)、…どう見ても不気味な名前の島であるが、私はこの名前の事が気になって仕方がない。まるで横溝正史の怪奇怨念因果応報を主題とした小説の題名のようではないか。…それと1500回以上も発生している地震とを関連して、私はこの悪石の石は、ひょっとすると島特有の地盤の脆さを指しているのでは…と考え、調べてみた。

 

島名の由来は2つあった。…この不気味な島名の由来は源平の時代に遡り、この島に逃れて来た平家の落人が、追っ手を遠ざける為にわざと悪い名前をつけたという説。…もう1つは、この島は岩が多く、崖上から頻繁に岩が落ちてくるから名付けたという説がある事を知った。

 

落人の話もリアリティがあるが、私は落石説の方が面白い。…つまり崖上からの異常に落石が多いという事は、島が度々激しく揺れて次第に崖に亀裂が多数生じ、結果、割けた岩が落ちてくるように思われる。…つまり最初に私が思った、悪石島の「石」はやはり、この島の地盤の悪さを意味しているように思われるのである。…島の歴史を記した古文書のような物があれば面白いのだが…、調べてみようという学者はいないのだろうか。

 

 

 

…さて、前回のブログでご紹介した、今月の20日迄、東京恵比寿のLIBRAIRIE6で開催中の個展「七つに分割されたマルグリットの肖像」展であるが、初日から来廊される方の多さに驚いている。

 

…画廊は12時から18時までの6時間であるが、初日だけで来廊された方は60人を超えていた。…つまり1時間で10人は来られた事になる。美術館でなく、画廊としては異例の来廊される方の多さである。

 

……今や伝説的な画廊になっている佐谷画廊の故.佐谷和彦さんから直接伺った話であるが、1980年代のある年に佐谷画廊で「パウル・クレ-」展を開催した時は、来廊者数が凄まじく、会期中の来廊者は実に三万人を超えて、佐谷さんは酸欠の為に何回も画廊の外に出たと、笑いながら豪快に話されていた事を想い出す。…佐谷さんの展覧会にかける熱意と、またクレ-財団と直接交渉したりして、厳選して展示する作品の質の高さを美術を愛する人々は知っていて、それを時の新聞の文化欄が取り上げたこの展覧会は、今や伝説になっている。

 

今回の個展でも、再度来られる方がいて、私も手応えを覚える展覧会になっている。…今回は、画廊の空間の一部で、砕いたガラスによるインスタレ-ションのような試みもしており、この試みは今後の制作に繋がっていくように思われる。…今回の出品作では、、ロンドンの1930年代の巨大な時計の文字盤を真っ二つに切り裂いた作品も展示しているので、ご高覧頂きたいと思っている。

 

…最後に画廊の展示風景を掲載しておこう。20日の最終日まで未だ9日間(月曜・火曜のみ休み)残っているので、アトリエで進行中の制作と合わせ見ながら、私もなるべく在廊している予定である。

 

 

 

 

 

 

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『梅雨が来る前にお知らせすべき、大事な展覧会について書こう』

⭕…沖積舎の社主・沖山隆久さんの企画出版による私の第一詩集『直線で描かれたブレヒトの犬』が刊行されたのは2020年の12月。詩集の大半は関係筋にお送りしたが、若干数が手元に未だ残っていた。私はあまねく、まだ存じ上げていない未知の人へも詩集の存在を発信しようと思い、このサイトに告知欄を作り購入される希望者を募った。…反響は大きく沢山の方から毎日のように購入希望の手紙を頂いた。…そして私はその方々のお名前とサインを詩集に書いて各々の方にお送りした。………

 

 

しばらく経った或る日、一通の封書がアトリエに届いた。封を開けると、5枚の便箋にびっしりと詩集の感想が書かれていて、その緻密な論考と熱く伝わってくる何物かに惹かれて私は一気に読み終えた。…そして好奇心の強い私は、この手紙を書かれた人に興味を持ち、直ぐに電話をかけたのであった。…一度しか無い人生。この人に会って、直に話がしたいと強く思ったのである。…そして、当時まだ在った東京・八重洲ブックセンタ-のカフェでお会いする事になった。

 

 

…話は主に文芸の話であったと記憶するが、話していて(この人とは波長が合うな)と思うようになり様々な話へと発展していき話がどんどん面白くなっていった。…話も後半に入った頃に、その人はご自身が画廊をやっていて、私の版画から現在までの作品が好きなのだという事を静かに語られたのであった。…表現者という仕事をやっていて、私が本当に幸運だと思う事は、人との出会い、有り体に言えば、このブログでも書いて来たが、各分野で本物と云える人との出会いに恵まれている事である。…画商では、70~80年代の美術界を牽引して、もはや伝説的な存在として語られる佐谷画廊佐谷和彦さん。…また多くの画商からその確かな眼識を評価されていたギャラリ-池田美術の池田一朗さんをはじめとして、この画廊という仕事に矜持と自信を強く持っていた人々との出会いに恵まれていた事である。

 

 

…そして、今、私の目の前におられる人を見て、内に強烈な自信を秘めた人だとも私の直感が感じたのであった。…話はその後もだいぶ語り合い、別れる時には、その方の画廊で開催する個展の話も具体的に決まっていたのであった。…それが、千葉(総武線・西千葉駅から徒歩5分)で山口画廊を運営されている山口雄一郎さんとの出逢いであった。そして毎年の春5月頃に個展を開催するようになり、今回で早くも3回目になる。

 

…展示のセンスも群を抜いて抜群であり、また毎回、山口さんが執筆されて作っている「画廊通信」という冊子も、そこに書かれた内容は、極めてスリリングであり、鋭い眼識の高さを示しながらも難解に堕ちず、極めて平易な言い回しの内に、私達は知の螺旋構造の妙に堪能を覚えるのである。(画廊にて配布)

 

 

 

…今年の1月から鉄のオブジェを作り出してそれも発表しているが、なかなかに好評であり、初日に画廊を訪れた私は、今回の個展『直線で描かれたブレヒトの犬』に強い手応えを覚えたのであった。

 

 

 

 

 

…今回の千葉・山口画廊での個展画像を掲載するので、ぜひのご高覧をお願いする次第である。

 

 

 

 

 

 

── 直線で描かれたブレヒトの犬 ──

 

第3回 北川健次展

2024年 05月22日 (水) 〜 06月10日 (月)

 

 

 

宙空を鋭利に貫く直線、架空を豊潤に歪める曲線、不穏な浪漫を湛える座標空間に、異形の図像学が生起する。謎めいたボックス・オブジェに加えて鋼板と鉄線による新たな金属オブジェも交え、具象と抽象の絢爛と交錯する第3回展、秘めやかな官能に満ちた異次元の境域を。

 

 

【DM】 Sarah Bernhardt の硝子の肖像 (部分)

 

 

 

 

 

山口画廊

10:00 ~ 20:00 / 火曜定休

〒260-0033

千葉市中央区春日 2-6-7 春日マンション102

☎ 043-248-1560

 

 

 

 

 

 

 

 

⭕さて、次にご紹介するのは、半蔵門駅から直ぐの『執行草舟コレクション/戸嶋靖昌記念館』で開催中(4月30日~8月31日まで)の「砂の時間」展である。この美術館では精力的に、かつ密度の濃い問題提示から企画された展覧会が開催され、訪れた人々を美の酩酊と観照する事の深い意味へと導き、自問の思索の場となっていて、訪れる人は多い。また毎回、展覧会に沿って「ARTIS」という冊子が作られているのであるが、この美術館を立ち上げた著述家・実業家である館長の執行草舟さんに美術館学芸主任の安倍三﨑さんがインタビュ-した話(この話が毎回深く、かつ面白く、知の力業と直観で読み解く事を要求され、自ずと鍛練されていく)が主体となり、また画家の戸嶋靖昌氏のグラナダ滞在時の手紙や、執行草舟コレクションで所蔵する膨大な数の作品と作者に対する論考などがコラムの形で連載されていて、私は毎回、この「ARTIS」が届くのを楽しみにしているのである。

 

 

…前述した山口さんとの出逢いは私の詩集であったが、執行さんとの出逢いもまた一冊の本からであった。…NHKエデュケ-ショナルの方が拙著『美の侵犯-蕪村x西洋美術』(求龍堂刊)を執行さんに薦められ、それを読まれた執行さんが直ぐに私が個展を開催中の高島屋・美術画廊Xの会場に来られ、その場で作品15点ばかりを即決で購入を決めらた事が出逢いとなったのである。

 

…執行さんが会場で作品を選ばれるその速さは凄まじく、広い会場内を一巡しながら、およそ2分くらいで15点を決められたのであった。(…銀の稲妻が精神と肉体に宿ったような人だな!)…これが私が初めて執行さんにお会いした時の印象であった。…数千点は下らないという数多のコレクションを所有されていて、展覧会の企画の度に作品が比較文化論的に変容していく様は、実に面白く勉強にもなっている。…今回の「砂の時間」展では、執行さん所有の私の数多ある作品の中から7点の版画とオブジェが選ばれて展示されているので、ぜひご覧頂きたく、お勧めする次第である。

 

 

 

 

 

「執行草舟コレクション/戸嶋靖昌記念館」

《砂の時間展》

開期:4月30日~8月31日まで

開館・火~土 11時-18時
休館 日祝・月曜定休

〒102-0083 東京都千代田区麹町1-10 バイオテックビル内

TEL03-3511-8162

 

 

*来館ご希望の方は、事前にご一報ください。

 

 

 

 

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北川健次詩集『直線で描かれたブレヒトの犬』
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