『横浜から名古屋へ』

12日(水)の11時に名古屋ボストン美術館に着き、館長の馬場駿吉さんと、三時間ばかり、久しぶりのお話をした。主に瀧口修造氏の話、そしてヴェネツィアと俳句の事が話題になる。その後、開催中のジム・ダイン展を見る。五月以来2度目であるが、現在開催中のクレー展(東京国立近代美術館)と双璧の、質の高い展示内容である事を実感する。

 

2時過ぎに、名古屋芸術大学教授の西村正幸さんに車で美術館まで来て頂き、共に大学へと向かう。今日は私が、版画コース・アートクリエイターコースの学生に話をする日なのである。車中で西村さんから、先月の講義をした版画家の山本容子さんが、〈ホスピスに展示する絵は何が相応しいか?から、芸術とは何か〉を語った由を聞く。意外と真面目なテーマである。では今日は、「芸術における二元論」を中心に、話をしようという考えがまとまった。会場に行くと、百人近い学生が既にいた。東京の美大の学生の多くは、ボーッとして覇気が無いのが多いと聞くが、ここの学生は好奇心に充ちた眼をしていて、〈よ~し、たっぷり話そう〉という気が湧いてくる。二時間ばかり話した後に質問が多くあり、手応えを感じる。京都精華大学で講義をした時も同じような手応えを覚えたが、二つの大学に共通しているのは、教える側の教授の理念に〈本当に育てたい!!〉という意思があり、学生各人の可能性を引き出す事に眼差しが届いている事だと思う。西村さんは初対面であったが、話をしていて旧知のような親しみを覚えた。100人学生がいれば、100の版画の新しい概念、新しい技法が在って当然という西村さんの考えは私と全く同じであるが、多くの美大の指導法は、その真逆が、ことのほか多い。既存の技法の型に、現代の感性を詰めていっても才能は開花しない。その意味で、この大学には可能性を強く覚えた。また再び訪れて話をしてみたくなる、そんな自由な気風のある大学である。

 

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