『新年に大吉を引いて思った事』

横浜に長く住んでいて、私がもっとも〈横浜らしさ〉を感じる時は、大晦日から新年に変わる時である。港に停泊中の船からいっせいに鳴らされた汽笛が遠くに聞こえる時、何ともいえない情緒が立ち上り、「あぁ、生きている」という実感が湧くのである。以前に山下公園のすぐ近くに住んでいた時は汽笛が間近で聞こえてそれも一興であったが、今いるアトリエからは、それが遠く近く、風に乗って切れ切れに響いてくるのもまた良いものである。その音を通してうっすらと、昔日の〈横濱〉や〈YOKOHAMA〉の物語の断片が透かし見えてくるのである。

 

元旦に神社で珍しくおみくじを引いたら大吉であった。しかしこの時に限って凶が入っている筈がない。おそらくは、大吉の大盤振る舞いであろう。境内の木に結ぶほど純ではないのでポケットに入れて歩いていたら、それかあらぬか、やっぱり来た!!震度4のかなり大きな地震である。最近発表された統計によると、昨年に起きた余震は、震度1以上が何と9723回もあったという。例年の約40倍以上、そしてそれによって日本列島の地穀の構造も一変(つまり脆くなっている)してしまっているという。私たちは昨年の3・11によって、小松左京氏のSF的ヴィジョンと思っていた小説『日本沈没』が、実は科学的理論と根拠に裏付けされた警告の書であった事を知らされた。そして、この世と彼の世に境はなく、実は地続きに繋がっているという、本来は自明の事をあらためて実感した。そして、いつしか鈍ってしまっていた、自然界に対する畏怖の念(交感能力)が少し目覚めたかに見える。さぁ、今年はどんな年になるであろうか。

 

 

今日、河出書房新社から久生十蘭の『十蘭レトリカ』が届いた。文体魔術師・言葉の修辞家(レトリシャン)十蘭を意味したタイトルである。表紙は、私のオブジェ『ダリオ館を飛翔した七匹の蝶の軌跡』が使われている。久生十蘭の表紙に私の作品を入れるのは三冊目。売れ行きが良く、この方角から私の作品に入られる方も増えているらしい。この本の解説を旧知の詩人・阿部日奈子さんが書いているのも嬉しい。十蘭の巧みな小説世界と共に味読していただければ有り難い。

 

 

 

 

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