個展始まる!!

日本橋高島屋の美術画廊Xで、10月30日(水)から11月18日(月)までの会期で、私の個展『ガール・ド・リオンの接合された三人の姉妹』が始まった。今回はコラージュ50点以上・オブジェ12点、そして銅版画・写真作品の大規模な展示である。台風一過、初日から快晴が続き、早々と多くの方々の来場で会場は賑わっている。

先日は加納光於さんが来られたので、前々回のメッセージ欄で書いた加納さんのオブジェへの私的解釈の件をお話しした。つまり、加納さんのオブジェとは〈観念〉であり、主体が別に在り、眼前のオブジェとして在るのは、その主体から投影された影である。その影の特異で独自な在り様を通して、そこから別所に在る主体の実相を透かし見る事。加納さんの作品を見るという事はその行為に他ならないと。・・・・その事をお話しすると、加納さんは強い興味を示された。今までに誰も語らなかった解釈の切り口であるが、かなり本質を突いているという旨を語られた。評論家とは違い私は実作者である。ゆえに実作者にしか見えて来ない解析の切り口、舞台裏に共にいる者にしか見えない解釈というのものが確かにあるように思われる。勿論、解釈に正解などというものは無い。唯、その対象についてあまねく思索をめぐらすという行為が面白いのである。

 

加納さんに続いて、推理小説家の折原一(おりはらいち)さんが来られた。折原さんとの話題は一転して、『八ツ墓村』のモデルとなった、昭和13年5月21日の夜半に実際に起きた連続殺人事件『津山三十人殺し』に集中する。私も折原さんもかつて各々に現場となった岡山県津山にある貝尾村の寒村を訪れている。折原さんはこの事件を近々に書かれる由。その構想を伺ったがなかなかに面白かった。私は個展に折原さんが来られた場合を予想して、あらかじめ用意しておいた、この事件関連の面白い二枚の写真をお見せした。戦後GHQが津山の裁判所の資料から横収したもので、現在はアメリカ公文書図書館収蔵の珍しい写真である。まさかそれが見れるとは思っていなかった折原さんは驚かれた。もともと折原さんの目は細目がちであるが、その瞬間あきらかに瞳孔が広がったのを私は見てとった。おそらく、何かヒントが浮かんだに相違ない。ともあれ折原さん、津山事件を扱った新しいミステリー小説の完成を楽しみにしています。

 

続いて美術家の池田龍雄さんが来られた。池田さんは、かつての初年兵で、特攻隊帰りである。故に気組みが違う。話題は〈空中戦において後ろに敵機が来た時に、どう旋回して振り切り、逆転の優位に立つか〉という話である。熱く語られる池田さんのお話に私の中の〈少年〉が熱くなる。そんな話に燃えてどうするのか?というご意見もおありかと思うが、やはり面白い。これは宮崎駿のアニメ『風立ちぬ』の主題とも重なるものである。個展は始まったばかり。久しぶりに又、面白い方々との出会いが待っている。

〈つづく〉

展覧会場入口にて↓

オブジェ作品(部分)

オブジェ作品

コラージュ作品

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