TVで度々見かける女優・男装の麗人・毎日、決まった時間に必ず現れて私の作品を誉めていく謎の〈七時十分の男〉・・・・etc。一般の方、旧知のコレクターの方の他に、びっくり箱から現れたような方々が時々、突然訪れてくるから、個展はもう一つの楽しみがある。
昨日はちょっと不思議な事があった。オブジェ・版画・コラージュの各々の作品が五点ばかりその日はコレクションされたのであるが、買われた方が皆、福島の人であったのには驚いた。しかも、初めてお会いする方ばかりである。その中の御一人であるW・J氏は御自身が美術家であり、福島大学の文学・芸術学系の教授をされていて、来年春に私を大学に呼んで講義をさせようという考えを持っておられ、その交渉の為に来廊された由。今まで画廊で直接作品を購入される事はなかったが、展示してあった私のオブジェを見て気に入られ、即決でコレクションを決められた由。私はW・J氏と話し始めて、たちまち感性の共通するのを覚え,打合せは順調に進んだ。私が福島の桃は岡山や山梨よりも甘くて美味で大好きであるという事を話したら、授業は桃の季節である七月に決まった。私の講義のテーマはおそらく、『複眼の思考』になるであろう。W・J氏は文化人の手形を作品にするシリーズを作っていて、今までに仲代達矢・三枝成彰・細江英公・山下洋輔・吉増剛造・・・といった方の手を型取りして発表を展開されている。来夏は私も型取りされる運命にあるらしい。W・J氏の作品カタログを拝見すると、舞踏家の大野一雄をモデルにした連作もあり、なかなか、その造型思考には独自のものがあるのを直感した。W・J氏とは長いお付き合いになっていくという予感がある。
画廊からアトリエに戻ると、嬉しい便りが届いていた。コレクターの三宅俊夫さんから、福山に念願の画廊を開設したというお知らせである。氏が30代からコレクションされてきた作品の数々を月替わりで展示されるのだという。スタートは「北川健次 — オブジェと銅版画」展、12月は「瑛九のフォトデッサンと池田満寿夫の版画」展と続き、4月の「横尾忠則の世界」展まで好企画が次々と組まれている。 特に関西方面の方はぜひ足を運んで頂きたい。三宅さんのこだわりの美意識が詰まった画廊である。
高島屋での個展はいよいよ後半に入り、18日まで続く。今年最後の個展である。
三宅俊夫さんの画廊紹介
「miyake」
〒720-0056 広島県福山市本町4-5 2F
bouji161@yahoo.co.jp
open(水~土)12:00~18:00
(日・月・火・祝日休廊)
TEL.070-5675-6712