『新春は巴水から』

新年あけましておめでとうございます。私からの年賀状を先ずは画像でお送りします。この写真は、昨年のイタリアでの撮影時にローマで撮ったものに手を加えたもの。低い大理石の机の下でふと見つけた羊の彫刻。「これを来年の年賀状に使おう!」と思って撮った写真です。

 

 

さて、新年早々に日本橋高島屋で開催中の川瀬巴水(かわせはすい)展に行く。巴水はいい!!広重の叙情のエッセンスを継いだような哀しみがあり、私たちとは少し時代を異にするが、その画面の気配の中に、私たちは自分の失って久しい影を、ありありと見てとってしまうのである。私たちの感性は、実は新しい発明を享受する事になど、とっくに疲れ切ってしまっている。詩人の中原中也が叫んだように、電話以降の発明は、人間の本質にある大事なものを、実は壊していくにすぎないのである。不足感の中に流れるゆったりとした時の流れ。人と人との心の交流。四季の風情。私はゴヤやベルメール、そしてジャコメッティ、ヴォルスなど、こちらに向かって突いてくる作品を愛する者であるが、アトリエに掛けてあるそれらの中に、巴水の版画をひっそりと掛けて見たいと、いつしか思うようになっている。何もけっして疲れているのではない。巴水の主題と私のそれとは、表相を異にしながらも、ノスタルジアへの強い想いが在るという点で一致していると思うからである。さぁ、新しい年が始まった。今年も新たな表現の領域に挑ばなければならない。その為には、イメージの狩人としての未知なる感性の武器を磨いていかなくてはならない。新たなる未知の表現世界。今、少しづつそれが見えて来ているのである。

 

 

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