『写真の個展いよいよ始まる。』 

日本橋浜町のギャラリ―サンカイビで、10日から写真の個展『暗箱の詩学―サン・ジャックに降り注ぐあの七月の光のように』(5月30日まで)が始まった。画廊のオ―ナ―の平田美智子さんは、9年前に私の写真家としての可能性を早々と見出されて、渡航の軍資金も用意して頂き、パリの硬質な光の中へと送り出してくれた慧眼の人であり、美の仕掛人であり、総じての私の恩人である。私はその期待に応えるべく厳寒のパリで集中して撮影を行い、帰国後にサンカイビで個展を開催した。その反響は直ぐに現れ、新聞の批評欄に好意的に書かれ、この国の写真分野のギャラリ―の草分け的存在であるツァイト・フォト・サロンの石原悦郎さんから絶賛され、熱い内容で書かれた分厚いお手紙までも頂いた。また出版社の沖積舎からは、企画で私の初の写真集『サン・ラザ―ルの着色された夜のために』が刊行されて、この国の代表的な写真家として知られる川田喜久治さんからは私の写真の特質に言及されたテクストを頂き、その文章が写真集に所収されている。そして写真評論家の飯沢耕太郎さんからもテクストを執筆して頂いたりするなど、幸運な恵まれたスタ―トを切ったのであった。しかし私は表現者として、オブジェ、コラ―ジュ、そして執筆の活動もする為に、まとまった写真の個展は今回の個展が実に久しぶりの発表となるのである。

 

撮影は昨年の9月に敢行された。パリとベルギ―・ブリュッセルの二ヶ所に赴き、約2000枚が撮られ、その中から厳選の篩を経た作品が、いま展示されているのである。……タイトル『暗箱の詩学―サン・ジャックに降り注ぐあの七月の光のように』に登場するサン・ジャックとは、パリ4区、シャトレ地区にある1522年築の54mの鐘楼―サン・ジャックの塔の事である。スペインまでのサンティアゴ巡礼路の起点で、アンドレ・ブルトンが「この孤独な、向日葵のような暗鬱さで華麗に立っている」という一文を遺しているが、なにより、パスカルが大気圧の観測実験(気圧は高度によって異なる)をした高楼として知られている。私のパリのイメ―ジの中では何故かいつも、この塔が中心に位置する不気味な存在として在り、その暗い魔的な存在に降り注ぐ光の放射をイメ―ジしながら、バリの随所においてシャッタ―を切ったのであった。私の背後に絶対の闇を配し、その波動を覚えながら、眼前の闇に棲まう光の魔性を刈る営みとして、撮影が連日行われたのである。……今回の展示では写真作品1点づつに書き下ろしの詩を配するという試みも行っているので、ぜひ併せて楽しんで頂ければなによりである。……会期中の5月21日は、長野の池田満寿夫美術館でゲストト―クで『池田満寿夫―天才の創造の舞台裏』と題して喋ることになっており、1泊して翌日に帰るので、22日は私はサンカイビの個展会場には不在であるが、30日までの会期中は、なるべく会場にいる予定である。……次回のメッセージは、その池田満寿夫さんの事と、長野の池田満寿夫美術館について書く予定。次回もご期待頂ければ嬉しい。

 

 

 

 

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