久生十蘭

『「十蘭錬金術」刊行さる』

私のオブジェ作品を表紙の装画に使った久生十蘭の「十蘭錬金術」が河出文庫から刊行された。「十蘭万華鏡」「パノラマニア十蘭」「十蘭レトリカ」に続いて四冊目であり、全て私のオブジェを表紙に採用して異例の売行きであるという。特に今回の表紙は、本が届いた時に見て、デザイナーの山元伸子さんのレイアウトセンスが実に良く、間違いなく人気が出ると直感した。はたして、今回の本は刊行直後にして、既に文庫本全体の中から売行きの良い本のベスト5にランキングされており、一ヶ月に出る文庫本の新刊総数が200冊から300冊ある事を思えば、作品を提供した者として嬉しい限りである。唯、本の表紙を御覧になった方から、その作品を入手したいという問い合わせを今回も数件頂いたが、上記の四冊に採用されたオブジェは全て、コレクターや画廊のオーナーの個人コレクションに既に入っている為にお渡し出来ないのは残念である。版画と違って一点しか存在しないオリジナル作品のため、残念ではあるが、いたしかたのない事である。

 

今月から来月にかけて、上記の本以外に私の作品を表紙の装画にした本が続けて刊行される。筑摩書房、東京創元社、国書刊行会の三冊である。稀代の言葉の錬金術師 – 久生十蘭、そして難解な数学書(ガウス数論論文集)、ミステリーなど各々の異なった表現世界の表紙になる事で、私の作品世界が今一つの別な装いになる事は、作者としての秘かな興味がある。そして、書店というマスメディアを媒体として、その角度から私の作品の存在を知る人が更に増えてもらえれば、イメージを共有し合える関係がより確立し、広がっていくという意味において、お互いにとって良い事なのだと思う。ぶれない確とした美意識を持った「確かな眼」の持主は、まだまだ現実に存在している筈であると、私は確信している。

 

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