『個展始まる。』

日本橋高島屋本店6階の美術画廊Xで私の個展『密室論 – ブレンタ運河沿いの鳥籠の見える部屋で』が始まった(11月19日まで)。美術画廊Xでの個展は今回で四回目。作品総数80点以上から成る大規模な個展である。この画廊は広いので、毎回、入り口にテーマに沿ったディスプレーの展示をする。今回は掲載したとおり白木の窓の中に、石にプリントしたダ・ヴィンチの衣装のデッサン、定規などを構成した。

 

展示の中心は、コラージュ作品である。このコラージュという方法論の祖はシュルレアリスムの画家マックス・エルンストをその始まりに見る人は多いが、さにあらず、実はわが国の扇面図屏風に既にその祖が見てとれる。しかし、コラージュという技法は美術の分野に在って、妙にその立ち位置が定かではない。今まで、野中ユリさんをはじめとして試みる人は多かったが、澁澤龍彦のテクストなど・・文学者の文章に共存する形が多かった。つまり一点で自立した完成度を持つコラージュ作品がほとんどわが国では皆無であったのである。今回、気概のある私は真正面から御するようにして、この技法に挑んだ。その結果はご覧になって判断して頂くしかないが、評判は上々で、展覧会としての手応えはかなり強く伝わってくる。その手応えの例として、たとえば初日に御一人で6点の作品(コラージュ・オブジェ・版画など)をコレクションとして求められた方がおられ、私を驚かせた。前回この画廊で作品をご覧になられた方々は、一変して全く別なイメージ空間が広がっている事に驚かれているが、展覧会を、或る期間に限定して開示された解体劇と考えている私にとっては当然の事である。そして、作家の多くの個展が、前回と同じワンパターンと堕していることへの私なりの批判もある。やはり表現者は常に変化し、更なる新たなイメージの領土を深めながら次々と開拓していくべきではないだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

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