直線上のEVaの柔らかな右腕のために

地下鉄の茅場町駅から歩いて2分。霊岸橋の近くに不思議な趣ゆえに、ひときわ目を引く一軒の古いビルがある。その名を第二井上ビル。伝聞によると昭和2年の建立というから、東京で最も古い建物の一つであろう。ガラスの重い扉を押して中に入ると、そこに漂っている空気はもはや別世界のそれである。薄暗い階段を上って三階へと行く。するとそこに、ひっそりとした佇まいの「森岡書店」がある。西洋の写真集や美術書を商う書店とギャラリーを兼ねた場であるが、むしろ第一印象は、秘密の書斎や探偵事務所に近いイメージを抱かせ、尚も残る不思議さを漂わせている。以前にも私は、このメッセージの欄で森岡書店との出会いを熱い文章で記した事があったが、ようやく比の度、ここで作品の展示を催す事となった。今回は、作家にして、美術家・写真家としても知られる異才伴田良輔氏との二人展である。

 

 

昨年の春に開催した高島屋での私の個展に伴田氏が訪れてくれた際、開口一番「今、幾何学の美しさにはまっている。」と氏は語ったのであった。それを聞いた瞬間、私の脳裏に〈幾何学のエロス〉という文字が突然に浮かび「伴田さん、幾何学とエロスを主題とした二人展をやりませんか。場所は二人とも面識があるという事から森岡書店で!」という言葉を返したのであった。伴田氏も大いに興味を示し、その場で展覧会の構想が立ち上がり、内容に共鳴して頂いた森岡督行氏の企画で実現したのである。

 

霊岸橋にて・・・・ 北川健次

 

 

 

 

『直線上のEvaの柔らかな右腕のために』

伴田良輔×北川健次

会期:2010年1月7日(木)〜1月30日(土)

時間:13時〜20時

場所:森岡書店 03-3249-3456
中央区日本橋茅場町2-17-13 第二井上ビル305号

 

 

 

 

 

 

カテゴリー: Event & News   パーマリンク

コメントは受け付けていません。

商品カテゴリー

北川健次詩集『直線で描かれたブレヒトの犬』
Web 展覧会
作品のある風景

問い合わせフォーム | 特定商取引に関する法律