『銀座—画廊香月で個展開催中』

久しぶりでアトリエに戻って来たら、たくさんの郵便物が届いていた。その中に先月のぎゃらり-図南(富山)の個展で拙作を購入された方々からの嬉しいお手紙があり、私は強い感動を覚えた。ぎゃらり-図南の個展では、お一人で2点以上の作品を求められた方が何人もおられて、私は現在形の制作に大きな手応えと自信を覚えたのであるが、そのコレクターの人達から作品を入手された後の、作品とこれから対話を続けていく事の興奮と喜びが様々に綴られており、以前にも書いたが、私は本当に幸せな表現者である事をあらためて実感したのであった。このように何人ものコレクターの方々から直にお手紙を頂く作家が、果たして何人いるであろうか。…富山を訪れて1ヶ月近くが経つが、私はもう富山での事が懐かしく、たくさんの良い思い出に包まれている。旧知のオ-ナ-の川端さんご夫妻、そしてコレクターの方々との楽しい語らい。…富山での個展はいつもそうであるが、刺激的で、しかも心地よい緊張に充ちているのである。

 

さて、桜が満開に開いていよいよ四月。…今、銀座一丁目の奥野ビルの6階にある画廊香月で、個展を開催中である(4月16日まで・開廊時間:1時〜6時半・日曜休み:新作オブジェとコラージュを中心に展示)。… 今回で3回目の個展である。会場となっている昭和初期に建てられたレトロでモダンな奥野ビル内には、幾つもの画廊や謎めいた事務所などが無数に入っていて、「死刑台のエレベーター」を想わせる手動式のエレベーター、地下室まで続く、離れた左右に在るひんやりとした階段、昼なお薄暗い各階の廊下、…は、何処かで私の作品の気配に通ずるものがあり、尽きない興味もあって私は毎日画廊に通う事にしている。この画廊香月でしかお会い出来ないコレクターの方もおられて、私の作品に日々、熱心な視線が注がれており、私としては目が離せない。… コレクションするという行為もまた、作者の創造と均しくクリエイティブなものがある。 個展は、その人達の声が直に聞く事が出来る重要な機会なのである。

 

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北川健次詩集『直線で描かれたブレヒトの犬』
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