『モランディ展を観る』

個展開催中の銀座・画廊香月に行く前の午前中に、モランディ展(東京ステーションギャラリー)を観に行く。モランディはジョット、ピエロ・デッラ・フランチェスカ、スルバラン…等から美のカノンとも言える様々な影響を受けながら、そのスタイルを確立していったが、影響の最も深部に在るのはセザンヌである。…静物考の構図の奥にある、見えない今一つの秩序、その奥にある深遠な気配の韻、更なるその奥にある神秘…。それとの交感を求めて、会場には多くの観客が訪れていた。現代の情報過多によるオブセッション故の感覚の乱れに、モランディのぶれない不動な姿勢と生き方が私たちに示唆するものは実に多い。…私はモランディの作品から幾つかのインスパイアするものを得た。それは幾何学的な主題に関するものであるが、モランディは幾つかの思考のヒントのようなものを、私に与えてくれた。個展開催中の今は制作から離れているが、個展が終われば、一転して私はアトリエに入り、人々との没交渉な日々が9月の長きにまで続いていく。それ故に、今、モランディの表現に触れ得た事には恩寵のようなものがあった。

 

銀座一丁目の奥野ビル6階にある画廊香月での個展は、16日まで開催中である。コレクションとは観るだけでなくて、実は豊かな創造行為である。…その意味で、私の作品をコレクションして、長い対話を交わしていく今一人の作者となっていく人達との、再会と新たな出会いが、今暫く続くのである。

 

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