『…まもなく始まる個展を前にして』

フランスのニ-スで、テロがまた発生して80人以上の死者が出た。今回は花火見物の群衆の中にトラックで乱入して次々に引き殺すという、今までにないやり方なので、こうなるともはや防ぎようがない。まさに運頼みになって来た。…最近とみにテロが頻度を増しているので、9月初旬から、撮影で再び10日間ばかりフランスに行く予定にしている私としては、最近はヒンヤリとしたリアルな緊張感を覚えている。テロが対岸の出来事ではなくなって来たのである。…最初に行くのは、ベルギー国境に近いリ-ルという街であるが、ここは情報に拠ると過激派の分子が今もなお多数潜伏している場所なので、ちょっと要注意である。… とはいえ、自分が表現活動の為に望んで行くわけであるから、万が一の時には前向きで死んでいこう、…と、とりあえずはそう思っている今日この頃の私ではある。……今回のパリ滞在中には、友人の写真家の平竜二さんが、ピカソ美術館に近いマレー地区のギャラリーで写真展を開催するので、パリでの再会が楽しみである。平さんの写真は静謐を極めた不思議な気配のする写真で、特に西欧での人気が高く海外での発表が多い。 パリのカフェでは、サン・ジェルマン・デプレ地区にあるカフェ・ボナパルト(ドラクロア美術館すぐ傍)が何故か特に好きなので、平さんを誘ってお茶しながらの再会が今から楽しみである。

 

…日本橋高島屋の個展は9月28日からであるが、8月末には全作品を作り終えている…という予定で制作が、これから最後の追い込みに入っていくところである。今回の作品を総じて現す重要な個展のタイトルも決まり、25日には、私のプロデュースと担当を長年に渡ってして頂いている高島屋美術部の福田朋秋さんと、個展案内状の細かい打ち合わせが予定されている。私は、案内状を発送する段階から既に個展は始まっていると考えているので、この日の福田さんとの打ち合わせは特に重要である。最近の私の表現世界の変化と、新たに試みている事を案内状は直で伝える役目があるので、この展示前の打ち合わせは最も大事な事なのである。…毎日の制作は、張りつめた中での作業であるが、作品を作っているというよりも、美とポエジーが途中から立ち上がって向こうからやって来るという、まさにインスピレーションの発生と、その定着をしているという感が強い。今年は台風がほとんど無く、長雨が毎日のように降り続く、不気味な梅雨である。…その不穏な日々の中で作品が日々作られていくのである。

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北川健次詩集『直線で描かれたブレヒトの犬』
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