『引越し狂想曲』 

日本列島を猛烈な寒波が襲い、各地が豪雪にみまわれているが、私の棲む横浜は幸いにも晴天が続き、おかげでアトリエの引越し作業が快調に進んでいる。……とは言っても19年ぶりの転居なので、さすがに荷物の種分けが大変で、時に放り出したい気分になってしまう時がある。そんな中で、昔撮影した懐かしい写真が出てきたりすると、ついつい見いって、昔日のその日、その時の記憶の中に入り込んでしまうのである。

 

今回のブログに掲載するのは、その中の数枚である。……2枚横に連続して並べているのは、共にベルギ―の古都ブル―ジュの博物館に展示してあった、実際に使われていたギロチンである。……覚えておられる方もおありかとおもうが、以前のブログで、私はこのギロチン台の上に登り、首を入れる板を上げて自分の首をさしこみ、振り向いて真上に吊り下げてある巨大な刃を、冷や汗を出しつつ見た事がある事を書いた。まぁ今のように監視カメラがなく、警備員もいない、のんびりとした27年前の頃ならではの事である。ギロチン台は二つ展示されていたが、私が首を突っ込んだのは、どちらであったか、……たぶん向かって右側の方であったかと思われるが、はたして私の前に何人の首を、このギロチン刃はあの世へと送ったのであろうか!?。さて、バラバラに展示したのは主にスペイン、そしてパリであるが、ダリのアトリエのあるカダケス、タピエスの版画の原版、アンダルシアのアルハンブラの離宮…………。パリのノ―トルダム寺院の前で友人のお嬢さんと写っている昔日の私がいる。………………、片付けの作業をしていると、20代、30代、40代の各々の時期で、美術雑誌の特集や取材でいろいろと喋っている記事が出てきて面白かった。なるほど、こんな事を喋っていたのかと新鮮に思い出されて懐かしいが、私はそれらの雑誌を全て処分する事にした。段ボ―ル箱の底に沈んでいく昔日の私よ!……そうすると、生まれ変わったように、新たな自分の何らかの生成が入れ代わるようにして体内に生じてくる感がある。…引越しとは、一種の生前葬のようなものであり、生まれ変わって身軽になる儀式のようにも思われる。……次回のメッセージは、その新天地からの発信である。気分を一新した内容にぜひのご期待を!!

 

 

 

 

 

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