月別アーカイブ: 12月 2011

『この人、沖積舎・沖山隆久氏!!』

福井県立美術館での私の個展『鏡面のロマネスク』も、いよいよ25日(日)で終了する。7部屋もある展示会場を巡りながら、自分の作品と向き合って様々な想いが去来した。そして、自分があんがい多作家である事を知って驚いたのであった。私の初期の版画を一途に愛する方々もおられるが、私の展開はまぎれもなく、その質と幅を広め、今だに誰も予測のつかない方向へ向かっているという事を、私自身の内なる醒めた批評眼をもって確信できた事が、本展における私にとっての最大の収穫であった。

 

先日刊行された私の写真集の仕掛人である沖積舎の沖山隆久氏は、17年前に私の最初の銅版画集を企画刊行して頂いた恩人であり、先見の人である。はるばる福井の個展にも来られ、実際に数多の作品を御覧になった後に、私に「今度は北川さんのオブジェの作品集を作りますよ、それも近い内に!!」と言って、私を驚かした。しかし、沖山さんは今回の写真集も予告どおり僅か1ヶ月で刊行したように、有言実行の人である。間違いなく、私のオブジェの世界の特質に照準を合わせた、ミステリアスで創意に充ちた「奇書」が、刊行されるであろう。沖山さんのような慧眼の人が身近に在るという事は、表現者にとって心強い限りなのである。

 

今、私の手もとには、刊行されたばかりの写真集『サン・ラザールの着色された夜のために』がある。作品に沿った詩を書いてほしいと提言されたのは、沖山さんであった。私は打てば響く人間である。感性を削るようにして計72篇の詩を三日間で書き上げた。そして、その一篇づつが、全く自立したものとなっている。もし、沖山さんの提言がなかったら・・・。そう思う程に、この写真集は、他の写真家による写真集とは異なりを見せている。一月には、この写真集の限定版が50部のみ刊行され、各々に未発表のオリジナル写真が入る事になっている。そして、私はその写真を沖山さんに既に渡してある。さてそれがどのような仕上げとなって世に出るのか、今から、私は楽しみにしているのである。

 

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『写真集、遂に刊行さる!!!』

11月の24日に福井を訪れて以来、実に19連泊続いたホテル暮らしがようやく終わり、横浜へと戻った。福井にいる間は、展示、新聞の連載執筆、テレビ、ラジオの収録、講演、対談、そして画廊での新作展発表、さらには中学の同窓会、高校での講演etc、あっという間に過ぎた多忙な19日間であった。

 

 

 

福井県立美術館刊行による私の個展図録があまりに出来が良く、充実した内容になっているので、その事をメッセージに記したところ、全国から美術館宛に問い合わせや注文が殺到し、係の人が対応に追われている。係の人に伺ったところ、ひとりで5冊まとめて注文する人などもおり、在庫がかなり少なくなっているようで、作者としても嬉しい反響である。おそらく今のペースでいくと、個展が終了する今月の25日頃には完売の為に絶版となる事は必至であるだろう。

 

さて、予告で記したとおり、遂に私の写真集『サン・ラザールの着色された夜のために』が、出版社の沖積舎から刊行された。写真74点それぞれに詩を74篇書いているが、私はその詩の全てを三日間で書き上げた。今までにない集中力を出したために、書き終えた後はしばし放心状態であった。写真集であると同時に、独自な詩集としての新しい形も倶えている。帯には、「〈美の侵犯〉美術家:北川健次による、写真と詩が切り結ぶ夢の光跡!幻視のエクリチュール!!」の文が入り、写真家 ー 川田喜久治氏のテクストからの引用文が光彩を放っている。既に福井県立美術館の個展会場では先行販売され、一日で二十冊以上のペースで売れているという。限定五百五十部(内五十部はオリジナル写真入り特装版)と少ない部数の為、これもおそらくは二ヶ月で完売・絶版となるであろう。印刷は最先端の技術を使ったアミ点の少ない直刷りの為、極めて美しく、日本の印刷技術のレベルの高さを示している。私の、詩集としての最初の本でもある。御興味のある方はぜひ御購読頂き、写真と詩による、私の新しい表現世界を楽しんで頂ければと願っている。

 

限定五百部の普及版は定価が7140円(税込)。限定五十部の特装版は定価が31.500円(税込)で、未発表のオリジナル写真が1点、写真集に付いている。ご注文は直接、沖積舎まで。TEL.03-3291-5891。FAX03-3295-4730。注文の受付は毎朝9時より開始しています。

 

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『松平頼方って、誰だ!?』

今年の6月頃だったか、一人の老人から電話が入った。老人は次のように語った。「いやあ、あなたのご活躍は福井のT氏から伺いました。立派です。私は長年ニューヨークで生活し、最近日本に戻って、今は熱海の別荘にいます。実はあなたの作品を少しまとめて買わせて頂きたいのですが、明日あなたのアトリエに伺っても宜しいでしょうか!!」と。(ちなみにT氏とは、いわゆる福井の名士の名前であるが、私は面識がない。唯、その娘にあたるNさんとは小学校の同級生であり、美しい顔の利発な子であった。松平と名乗る人物と、そのT氏の家系から連想して、私は幕末の福井の名君、松平春獄公の直系を勝手に連想してしまった。・・・・まぁ、無理もない。)で、話は続く。「明日と云われても私にも都合があり、明日は予定が入っているから又、連絡しますよ。TEL番号を教えてください」と私。すると老人は急に引いて「・・・体が不自由だから、では東京の事務所のTELを」と云って番号を告げた。明日来たいと云う程の行動派が・・・体が不自由・・・??」。そして電話が切れた。数日して事務所にTELすると、電話は鳴るが誰も出ない。その後も・・・、又、その後も・・・誰も出ない。曖昧な事が嫌いな私は、さすがに不審に思い、新聞社にいる後輩にT氏のTEL番号を調べてもらった。電話をすると、聞こえて来たのは45年ぶりに聞く同級生の声であった。何という導き。美しく利発だった顔が浮かび上がってきた。

 

福井県立美術館の個展のために明日、横浜を離れるという前日に、美術家連盟という団体から送られてきたチラシが、ふと目についた。パラパラとめくっていると、ある女流画家が語る「寸借詐欺にご注意!!」という文があった。それを読むと、或る日、一人の老人から電話が入ってきて、「君の作品をまとめて買いたい!!」と云った由。その女流画家は喜び、老人の指定する日に、彼をアトリエに呼んだという。老人は10点近くの作品を買い取る話をしてから、次のように語った。「しまった、財布を落としてしまった。あぁ、熱海に帰る電車賃がない・・・」すかさず、その女流画家は2万円を渡し「どうぞ使って下さい」と云ったという。その後、老人からは何の連絡もないし、連絡先として知らされた東京の事務所にTELしても・・・誰も出ない。と、文は告げていた。私はこの記事が面白く、声を立てて笑ってしまった。そしてさんざん笑った後に・・・ふと気がついた。(熱海の別荘・・・? 東京の事務所・・・? 、老人・・・?)私はハタと気がついた。6月に電話を掛けて来た、あの男に間違いないと。

 

美術館の個展と併せて、福井のE&Cギャラリーという画廊で個展も行っている。初日にT氏の娘さんである同級生のNさんが友人を連れて画廊に来られた。実に45年ぶりの再会である。そしてNさんと友人の方は、その場で作品も購入して頂いたから嬉しさ倍増であった。あれも、これも考えてみれば、あの老人、松平頼方のお陰である。ちなみに、老人は「マツダイラ・ヨリカタ」と云っただけで、「松平頼方」は私が、思いのままに記したもの。でもまぁ、こんな漢字であろう。はたして、件の女流画家には何という名前で切り出したのか、知りたいものである。

 

「レディメイド」を美的な概念へと高めたマルセル・デュシャンは、形而上学と詐欺師の両面を併せた最高度の知的な表現者である。詐欺師は知的犯罪の極みであり、私は嫌いではない。出来れば、この老人に一度会ってみたいと内実思っている。どのような人生を経て、老人は今も生きているのであろうか・・・。ともあれ、私は記す。「再び出でよ、松平頼方!!」と。

 

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