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RIMBAUDMANIA ランボーマニア展
2010年5月〜/パリ市マレの歴史図書館で開催中!

パリに現存する19世紀の遺構であるパサージュ・ヴェロ=ドダで、美術と文学の古書を商うベルナール・ゴーギャン氏から手紙が届いた。4年前にANAの機内誌『翼の王国』の編集長からパリ特集の原稿を依頼され、取材をした時以来の仲である。細かい文字でびっしりと書かれた手紙には、現在、パリ市立歴史図書館で開催されている『RIMBAUD MANIA』展で、私の版画を見た事、エルンスト、ミロ、ピカソ、ジャコメッティ、ジム・ダイン達の作品と比べても堂々とした存在感と強いアニマを私の作品が放っていた事、そしてあいかわらず年齢不詳の危しい人間でいるのか?という事・・などがエスプリとユーモアたっぷりに書かれていた。
ゴーギャン氏は、パリでも知る人ぞ知るハンス・ベルメールのコレクターであるが、ホックニー達とも面識があり、強い美意識を持った慧眼の人。そのゴーギャン氏からの好意ある手紙に、今後の仕事への自信が深まる。パリを訪れて展覧会を見て来られた、友人の澄谷裕子さんから詳しい話を伺った。会場の中でも最も目立つ場所に私のランボーの版画が展示してあったとの由。ネットで配信されてきた、本展の企画者であるランボーの研究家のJeancolas氏がインタビューを受ける時も、私の作品をバックにしてしゃべっており、氏はかなり気に入っている様子。アングロサクソン人は、基本的に東洋人を自分たちの下に見ているが、その先入観を払拭して評価された事は、何よりも嬉しいことである。〔澄谷さん、ありがとう〕
9月から始まる個展のために、今、制作は真っ只中。何故こういう時にパリで展覧会が開かれているのか。訪れてみたいが、状況はかなり難しい。展覧会はパリの後、ランボーの生地シャルルヴィルのランボーミュージアムに巡回されるが、訪れるとしたら、それが開催中の秋になるであろうか。
(北川健次)









フランスのナント市にある「ポムレー路地」という名の彫刻廻廊を写した、一枚の絵葉書がある。まるで舞台の書割のように巧みに配された何体もの寓意的な彫刻。シンメトリーの建造物。そして正面の階段を昇っていく人物群と降りてくる人物群の、チェス盤上の駒を想わせるような、これもまた巧みに配置。さらには、時を隔てた遥か彼方から現代の私達を凝視しているかのような、画面下部の少年のまなざし。絵葉書ならば本来は没になるであろう、この少年の突然の侵入は、構図全体の完璧な秩序をわずかに乱しながら、日常性からアニマ(霊性)を帯びた「不思議」へと、この絵葉書のありようを変える効果を演じている。そして、それが単なる絵葉書の域を超えて、百年以上も前のある一瞬の時を永遠に停止させてしまったような観も呈している。(未生の魂よりも以前に、私は確かにこの場所を訪れたことがある。)ーそう想わせてしまうような甘やかな既視感と、悪い夢見のような仕掛けのある毒さえも孕んだ妖かしの一枚表象。






